みなさんは、映画「となりのトトロ」や「おもひでぽろぽろ」をみたことがありますか。南部町の自然環境は、まさにその映画の舞台と重なります。雑木林、神社、お寺、水路、ため池、川、田んぼに畑といった、人が手入れをして管理をしている自然、それが南部町の自然の特ちょうです。このような環境を「里山」とよびます。里山には人の生活によりそって様々な生きものたちがくらしています。
南部町の自然環境は、いわゆる「里山・山里」の環境です。人々は稲作文化が始まった二千年余前から竹林で竹の子を採取したり、薪やホダ木にするために山にクヌギやコナラを植えて維持管理をしたり、材木を利用するためにスギやヒノキを植えたりしてきました。また、川や水路を管理し、ため池を作って田んぼや畑で作物を育て、神社やお寺の森を守るなどの営みを続けてきました。その営みによって作り上げられたのが「里山・山里」なのです。
南部町のような、もともとあった自然環境に人が生活するために、人によって適度に手を加えられている状態を、「二次自然」といいます。類義語で、里山、山里、里地、里海などと呼ばれることもあります。このように、人が手を加えることによって豊な二次自然が保たれている環境を、コピーライターの糸井重里さんは「手自然」と表現しました。南部町の自然の土台は、まさに「手自然」の中にあると言ってもいいでしょう。
現在、環境省発行の「絶滅の恐れのある野生動物~レッドデータブック(RDB)」に掲載されている多くの種類が、里山環境に強く依存している生き物たちです。全国で、荒廃した休耕田や植林地、雑木林が問題となっている中、南部町には、まだ維持管理された豊かな里山が多く残されています。そして、そこには希少な生物が多数生息していることが分かっています。これらの希少種は、レッドデータブックで細かくランク付けがされています。また町内には、特別天然記念物のオオサンショウオも繁殖し、県条例で保護が必要とされているブッポウソウやコガタノゲンゴロウなども確認されています。このような元々その地域で見られる野生生物を「在来種」といい、その種が日本でしか生息していない場合は「固有種」といいます。南部町にも、世界中に日本にしかいない、もしくは西日本にしかいない固有種が複数確認されています。また各都道府県でもレッドデータブックが発行され、鳥取県版も2002年に作られました。町内の生き物の情報を知る貴重な資料です。
しかし、一方で外来生物の影響も深く受けています。外来生物は便宜上、様々な分類がされています。まず、外国から連れてこられた「外来生物」と、日本国内の他地域から持ち込まれた「国内移入種」とに分けられています。また稲作文化とともに大陸から渡って来た生物を「史前帰化生物」と呼び、非常にゆっくりとした早さで日本の環境に組み込まれていきました。そして、特に近年において、大きな害を生んでいる生物を「侵略的外来生物」といいます。環境省では、その中でも特に注意を払わなければならない生物を「特定外来生物」に指定し、移動や飼育、販売等を禁止しています。またアメリカザリガニやミシシッピーアカミミガメなどは、離島など移入が確認されていない地域への持ち込みを制限する「要注意外来生物」に指定されています。
みなさんは、南部町で見られる鳥の名前を何種類あげることができますか?法勝寺川や小松谷川で泳いでいる魚の種類を知っていますか?地域の豊かさの目安として、在来の生き物たちの賑わいが保たれているか、という視点があります。私たちの町にはどんな生き物たちがいるのか、そしてその生き物たちの出身地はどこなのか、足もとの生き物たちに、ほんの少し意識を向けるだけで、町の自然の様子がより見えてくるかもしれません。そして、それが皆さんにとって、日本や世界の環境問題を考える大きなヒントにつながっていくことを期待しています。